"138億年前、無から始まった宇宙の巨大な息吹"
私たちはどこから来たのでしょうか? この根源的な問いに対する現代科学の最も強力な答えがビッグバン (Big
Bang) 理論です。約138億年前、宇宙は原子一つよりもはるかに小さな「特異点」と呼ばれる状態から始まりました。そこは想像を絶するほど超高温・高密度のエネルギーの塊でした。
多くの人がビッグバンを「何もない空間の中で起きた爆発」と誤解していますが、正しくは時間と空間そのものが誕生した事件です。風船の表面に点を打って膨らませると点同士が離れていくように、空間自体が膨張することで宇宙が生まれたのです。
ビッグバン理論は単なる空想ではありません。ノーベル賞を受賞した強力な観測証拠がこれを支えています。
1.
ハッブルの法則 (宇宙の膨張):
1929年、エドウィン・ハッブルはほぼすべての銀河が私たちから遠ざかっていることを発見しました。より遠い銀河ほど、より速いスピードで遠ざかっています。時間を逆再生すれば、すべては一点に収束するという意味です。
2.
宇宙マイクロ波背景放射 (CMB):
1965年に偶然発見されたこの「宇宙の雑音」は、ビッグバンから89万年後、宇宙が初めて透明になった時に放たれた「太古の光」です。これは宇宙のどこを見ても均一に観測されるビッグバンの化石です。
3.
水素とヘリウムの比率: 初期の宇宙の灼熱の垀堵の中で作られた水素とヘリウムの比率(約3:1)が、現在の宇宙で観測される比率と正確に一致します。
驚くべきことに、宇宙の膨張速度は重力で遅くなるどころか、未知の力であるダークエネルギーによってますます加速しています (加速膨張)。遠い未来には、他の銀河が光の速さよりも速く遠ざかり、夜空には私たちの銀河の星々だけが残ることになるかもしれません。
ビッグバン初期には水素とヘリウムしかありませんでした。あなたの体を構成する炭素、酸素、窒素、鉄はすべて、巨大な星の内部での核融合によって作られたか、星が最期を迎える超新星爆発の時に生成されました。カール・セーガンの言葉通り、私たちは138億年の歴史を宿した「星の子 (Starstuff)」なのです。