"学習された本能:ベルの音だけで涎が出る"
ロシアの生理学者イワン・パブロフは消化の研究中、偶然にも実験室の犬たちが餌をくれる研究員の足音を聞くだけで涎を垂らすという事実を発見しました。彼はこれを体系化して古典的条件付け (Classical Conditioning)理論を確立しました。本来は反応を起こさない中性刺激(ベルの音)が、生存に直結する無条件刺激(食べ物)と繰り返しペアになると、後にはベルの音だけで生理的反応(涎)を誘導するようになるというものです。
この理論は人間の行動と感情がいかに後天的に学習されるかを説明します。レモンという単語を聞くだけで口の中に唾が溜まること、大きな事故に遭った場所の近くに行くだけで心臓が高鳴る心的外傷後ストレス障害 (PTSD)、さらには恐怖マーケティングやブランドイメージ作りもこの原理を利用しています。私たちは知らず知らずのうちに数多くの条件刺激に囲まれて反応しながら生きているのです。